精神科医の仕事

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精神科の特色

精神医学

患者さんの訴えを、精神病理学もしくは精神症状学の知識を活用して病気の症状として抽出し、DSM-5などの診断基準に当てはめてどのような疾患なのかを診断し、その患者さんに合った精神療法や薬物療法を用いて治療するという、診断と治療が大事な仕事です。
さらに、患者さんやご家族の経済状態を考え、傷病手当金や精神科通院医療費公費負担制度、障害年金などの説明を精神保健福祉士をまじえて行い、精神医療をしっかり受けられる経済的なサポート体制にも配慮します。

大学病院ならではの仕事

通常の診療行為に加えて、以下の特別な治療も行っています。
1. 治療抵抗性統合失調症に対するクロザピン治療
2. 難治性精神疾患に対する電気けいれん療法
3. うつ状態に対する高照度光療法
4. 躁状態に対するサングラス装用療法
5. 復職に向けたリワークプログラム

精神医療へのニーズは高まり続けています

他の先進諸国と比較しても、日本国内における自殺率は高い水準にあります。
自殺にはさまざまな要因がありますが、大きな要因のひとつに「うつ病」があります。うつ病を予防、早期発見・早期治療することは、うつ病自体を減らすだけではなく、自殺を防ぐことにもつながります。

また、うつ病、不安症など何らかの精神疾患にかかる可能性は誰にでもあります。
現代社会において、精神状態を健康に維持(一次予防)し、精神的不調を早期発見・早期治療(二次予防)し、精神的回復を促し、その人らしい生活へ戻っていただく(三次予防)ことができる精神科医はますます必要になっています。

大分大学精神神経医学講座の特色「リワークデイケア」

他大学にはない、大分大学精神神経医学講座の特色として挙げられる「リワークデイケア」は、うつ病で休職した患者さんを復職に向けて作業療法士や看護師が支援するプログラムです。うつ病が改善した患者さんにとって、復職は大変ハードルが高く、実際に症状の改善と職場復帰には大きなギャップがあります。当科ではこのギャップを埋めるため「リワーク(Re-work)プログラム」に力を入れ、患者さんの職種に合わせたプログラムを行なっています。 また、復学、家庭内復帰を目標にされている患者さんも支援しています。

学生のハテナに答えます

精神科、心療内科って何が違うんですか?
そもそも本邦における心療内科は、池見酉次郎先生(1915-1999)が全人的医療を目標として日本心身医学会を設立され、九州大学精神身体医学研究施設(後の心療内科)教授になられたことから発展しました。池見先生の薫陶を受けた永田勝太郎先生に私(寺尾)は学生時代に、当時の北九州市立小倉病院において、定期的に開催されていたバリントグループでさまざまなことを教えていただきました。特に、そこで学んだ患者さんの人生に寄り添う姿勢は素晴らしいものでした。ただ、昨今の心療内科が必ずしも全人的医療の考えに沿わず、単に精神科の敷居を低くしているとか、あるいは心身症を診るのが心療内科と呼ばれることに、やり切れない思いがしております。他方、精神科の歴史は皆さんが授業で習った通りですが、私は両者の対象疾患が異なるだけで、その基本となる考え方に大きな違いはないと考えています。
精神科、神経内科、脳神経外科って何が違うんですか?
誤解を恐れずに一言でいえば、精神科は言葉を使い、神経内科はハンマーを使い、脳神経外科はメスを使います。
どの分野の知識を使いますか?
精神科は、哲学とくに実存主義を理解していると、ひとりひとりの患者さんの人生の条理、不条理に向かいやすくなります。さらに、精神療法と薬物療法が治療の両輪になりますので、これらを勉強していくことが必要です。
ちなみに私(寺尾)は、難治性うつ病の患者さんにリチウムを追加することで劇的に良くなった経験から、産業医大薬理学教室の門を叩き、泉 太教授(後の学長)や柳原延章講師(後の教授)のもとでリチウムの基礎実験をさせていただきました。牛の副腎髄質の初代培養細胞にリチウムを加えることでカテコラミンの生合成や分泌が亢進することを確かめ、学位論文としてまとめさせていただきました。(Terao et al., Biological Psychiatry, 1992)
また、1999年から2000年にかけて英国オックスフォード大学精神科のWarneford Hospital内にある臨床精神薬理部門のCowen教授のもとに1年間留学しました。この時には、ヒトを対象に神経内分泌的負荷試験という手法で中枢セロトニン神経機能を推定する手法を学びました。自分の興味のあることには喰いついて、さらに学ぼうとする姿勢が大切です。
患者さんの治療期間は平均的にどれくらいかかるのですか?
適応障害の場合には、原因を取り除けば速やかに改善しますが、うつ病や双極性障害、あるいは統合失調症の場合には、何年もかかる場合があります。かりに何年かかろうと、精神科医には寄り添い続ける根気と必ず良くなるという希望が必要とされます。