診療案内

精神科デイケアセンターにおけるリワークプログラム

精神科　山下 瞳、古田 麻実、寺尾 岳

精神科デイケアとは、精神科リハビリテーションのひとつであり、1日を通してさまざまな集団プログラムや個人プログラムを実施し、社会復帰・職場復帰を目指す活動です。当センターでは、特にうつ病や適応障害、双極性障害などの患者さんに対して、復職を目的としたリワークプログラムに力を入れています。

そもそも、リワークとはreturn to workの略語で、うつ病や双極性障害など気分障害のために休職している勤労者に対し復職支援を目的として行われるものです。精神科の通常の治療である支持的精神療法や薬物療法だけでは精神症状は改善しても、働くために必要となる機能は回復しがたいことが反省点となり開始されました。このリワークプログラムは精神科クリニックや精神科病院で行われることが多かったのですが、最近は大学病院でも行われるようになってきました。いまだ数は少なく、全国の大学病院の1割にも達しませんが、当センターでは適応障害や軽症うつ病のほかに、いわゆる難治性うつ病や発達障害を伴ううつ病、さらに双極性障害など、他の施設では対応困難となる患者さんも対象としています。

当センターでは、作業療法士や看護師の指導のもとに週5日、午前9時から12時までと、午後1時から4時までの計6時間行っています。プログラム内容に応じて、精神保健福祉士、公認心理師、芸術療法士、精神科医も関わり、多職種が復職支援に取り組んでいます。1日の利用者数は15名前後となっており、プログラム内容によってはグループを分けて取り組むこともあります。復職が近くなると、グループワークを通して職場での会議を模した活動に取り組み、職場での人間関係のストレスに類似した環境に身を置きながら、体調コントロールやストレス緩和の対処について模擬練習を行っていきます。

このようなリワークプログラムを当院で開始して、およそ4年が経過しています。残念ながら、リワークプログラムを中断される方は2割程度おられますが、プログラムを終了された方のうち、復職もしくは転職して就労に至った方は実に9割を超えています。さらに、復職もしくは転職された後、就労を継続できている確率も、図に示しますように、3年間で9割を超えており非常に良い成績です。コロナ禍でなかなか大変なこともありますが、私たちは患者さんの復職のサポートに尽力していきます。

2017年5月に開設して以降、2022年12月の時点で255名の方が利用されています。1日の利用者はおおよそ13名程度で、うつ病、双極性障害、適応障害いった診断を受けた30～40歳代を中心にした方々が利用されています。